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ベーグルパン図鑑

読み物

「希少価値とか、手間かけて作っているからとかで値段を決めたくない。」-パン100名店に選ばれるパン屋さんの大事にしているものは”おいしさ”という価値。(ブーランジェリーケン)

図鑑長
図鑑長

こだわりと材料、そして買ってもらう値段。

物作りの職人にとっては、そのバランスが本当に難しいところです。

パン職人ももちろんそうで、その中でも値段に関しては職人さんのなかでも永遠のトピック。

「たくさんの人に喜んでもらうために安くしたいけど、原価があるから・・・」

そんな風に悩んでいるパン職人さんは実はたくさんいます。

 

そんな悩みを超越したかのように見える名店が東京 赤塚にあります。

赤塚駅から徒歩すぐにあるブーランジェリーケンは、食べログ100名店(全国で最も人気のパン屋さん100選です)にも選ばれている超名店。

そのハード系のパンは、他店の追随を許さず日本全国でもトップクラスの人気を誇ります。

それなのに、月曜日はベーグル全品150円、水曜日はバゲット半額等々。名店でありながら、普通なら考えられないくらい安い値段で、開店以来ぶれずにパンを販売し続けてくれています。


今回は、名店のブーランジェリーケンさんが、どうしてそれほど安い値段でおいしいパンを販売してくれるのか。

こんな素朴な疑問をブーランジェリーケンを立ち上げたオーナーである田崎 健一郎(通称 ケンさん)にぶつけてきました。

 

ブーランジェリーケン オーナー


 田崎 健一郎さん(ケンさん)

2005年にオープンし、今では食べログ100名店にも選ばれる名店ブーランジェリーケンのオーナー。

長期熟成の末に作られるハード系のパンと、日本で人気になる以前から作っているベーグルはファンが大量におり、頻繁に行列が出来る。

味に徹底的にこだわり、使い分ける小麦は日本、カナダ等合計13種類以上。

毎日日替わりでセールを行い、普通では考えられないような安価でこだわりのパンを販売している。月曜日はベーグルマンデーとなっており、全てのベーグルが150円。水曜日はバゲットデイでバゲットが140円という驚異のコスパ。

もともとパン職人を目指していたわけではなく、かつては劇団や格闘技もやっていたそう。

お店にパンの種類が多いのは、「同じものを作っていると、お客さんがあきちゃうからね。作ってる方も飽きるし笑」とのこと。


 


たくさんの人がおいしいって思ってくれるってことをとにかく考えてやっている。それしかないですからねパン屋には。

 

-いきなりですが、どうしてそんなに安く、こだわっているパンを売れるのでしょうか。ケンさんは食べログ100名店にも選ばれる程の言わずと知れた有名店なので、普通に考えたら今の値段の2倍くらいにしてもみんな買っていくのではないでしょうか。私も買うとおもいますきっと。

 

田崎さん(以下 ケンさん):んー確かにそいう考え方もありますよね。原価率50%以上のパンも結構ありますしね。でも、パンって食べてもらってなんぼだからさ、安い方が色んなひとにたべてもらえるじゃない?

うちって今みたいにハード系のパンが世間になじむ前からずっとハード系のパンでやってて。今の若い人は割と食べ慣れてるかもしれないけど、ちょっと年齢層が上になると全然慣れてない人もいて。そういう人にも食べてもらいたいと思ったら、高いと試してももらえない。価値観の問題かもしれないですね。僕は、パン屋さんはとにかく食べてもらってなんぼだと思ってる。好みや年齢とかもある中で、どうやったらたくさんの人に食べてもらえるかなって考えてやってるだけですよ。

 

 

ブーランジェリーケンのリュスティック大納言

 リュスティック大納言。とんでもなくおいしいのに170円。ありがたすぎます。


 ツナのヘルシードッグサンド。250円。もちっとした生地にたくさんの具が入った日本最高峰ともいわれるカスクルートはブーランジェリーケンの代名詞

 

-確かに、色々好みもあるし、たくさんの人に食べてほしいと考えるとそうなったというのはすごく腑に落ちました。だけどそれでも安すぎる気はします・・・


ケンさん:たくさんの種類を並べてるのもいろんな新しいものを作るのも全部、いろんな人に食べてほしいから。全員の好みに合わせる事は出来ないから、試せる値段でいろんなものだしたりして。その中で、嫌いだった種類のパンが好きになったとか、おいしかったって言ってもらえるのがうれしい。その可能性があるからこの値段でやり続けてるところはあるかな。まぁただ安いから、良い小麦とか材料を使ってるのにジャンクって言われることあってちょっと悲しいですよね(笑)」

 

-本当はいいものを使ってると知らないと、確かにジャンクって言っちゃってるかもしれないです私も。


ケンさん:うちって結構他のお店に無いような組み合わせとかフレーバーのパンおいてるからまぁちょっとしょうがない部分ありますよね。例えば、うちで人気の味噌ナッツベーグル(リンク)はアーモンドクリームのザマンド生地がベース。ザマンド生地はもともと高めの食材だけど、ジャンキーな味って言われるんですよね。普通ならかなり高い食材なんですよ。小麦とかも今10種類くらいかな。すごくたくさん種類使ってるしこだわっているんだけど(笑)。」

 

-ケンさんのベーグルは月曜日だと行列は当たり前だし、山ほどの大量買いする人もたくさんいますもんね。


ケンさん:遠くから来てくれる人もいてありがたいですよね。昔から来てくれてる人とかだと、今でも「昔やってたあのベーグルないですか」って連絡してくる人がよくいます。でもメニューがなくなることも多いから作れないことが多くなってしまいますが。でもそういうお客さんも大事にしたいから、出来る限り夜遅くに時間があるときに作るようにしてます。

 

ブーランジェリーケンのパンたち

 当日味噌ナッツベーグルはありませんでしたが、全てのパンにこれでもかとナッツやレーズンが入っています!

 

 

パンの本当の価値で評価されたい。労力がかかるとか、希少価値がとか、そういうのは値段に乗せたくない。

 

-多くの人に喜んでもらいたいという気持ちでここまで親しまれてるのは、聞いていてもすごく素晴らしいなと思います。だけど、何が原動力でここまで出来るものなのでしょうか?


ケンさん:物の本質って値段じゃない気がしてるんですよ。

だから普通この値段では食べれないな、普通この価格帯では使えないなっていう材料を使いたいなって言うのがずっとあって。

ものの価値ってさ、それぞれの人が感じる価値とは違うじゃないですか。

希少価値で値段が高くなるものもあるし、手間で値段が高くなるものもあるし。

そういうの抜きにして、フラットにして、味でおいしいかなってお客さんの判断で見てほしいっていう想いがあって。

 

※ Tuesdayバゲット。しっかりハード系なのに、中はしっとりとしていて食べると小麦の香りが広がります。水曜日にはこれが半額に。


-希少価値が高いから美味しいなんて決まりないですもんね。


ケンさん:例えば、スベルト小麦って言う原種の小麦があるんだけど、原種としての希少価値が高いから値段が高い。この原理はわかるんだけど。

でも、その物の持つ価値なんて食べてわかんないから。だから、僕はただ食べてもらっていいなって思われたい。おいしいかわかんないけど希少価値がある材料だからってだけで高く売りたくないです。


手間がかかったからいいものですなんて嫌だ。

長い時間かけて作ってますってのも嫌。

短時間で作ってもおいしいものはおいしいし。本来の意味での、色んな好みを持った人の、味覚とか、趣向とか全てのものに訴えかけられるものを作りたい。

そういう事を考えて、自分のやりたいように、やりたい値段でおいしいものを作れたらなって。

 

パンが好きじゃないから、逆に長く続けられると思う

 

-すごくこだわって手間暇かけてるのに、おいしさを求めてみんなにたべてもらえるようにするなんて、私ならそんな風に出来ません・・・

ケンさんは噂によるとすごく長時間働いていらしゃるですよね?昔は深夜1時まで開けてることもあったとか。


ケンさん:パンが好きじゃないからできるのかな僕(笑)

 

-え?パンが好きじゃない?


ケンさん:好きだったらさ、何かパンを作って満足ってのがあると思うんだけど、そういうのが無いんですよね。もちろんパン嫌いじゃないですよ(笑)ただ僕より好きな人はたくさんいるんですよ。

だから、これ美味しいかなって思って作ったら案外つまんなかったり。

この作業場で夜まで熟成とかやってるとすごく長いから、自分の興味、趣味、社会への想いとか色々考えるんですよ。それを、パンとか、値段とかに投影することで満足感を得ようとしているんだと思います。

他の流れとか関係ない感じになるのもそのせいなのかな。

背景とか手間とかも知ってもらってもしょうがないし。


ブーランジェリーケン パン作り ※ 「好きじゃない」といいつつも、その使いこまれた道具には好き嫌い以上のものを感じます。


-それでも、なにかストーリーがあるものとか、おしゃれなお店とか、長時間こだわって作ってますって言うのは個人的には惹かれてしまうものはありますね(苦笑)


ケンさん:個人の価値観も色々あるしね。

だけど僕は、技術がある方がいいかとかわからないし、それがおいしさと直結してるかわからないし。

そういう付加価値を付けても本質的じゃない。

いろんな人に食べてもらいたいから、価格帯も抑えて。

若い人だけが好きな流れでもなく、周りのことは気にしないで。

いろんなものをおいしさという軸でやりたいですよね。

 

-確かに、結果的にケンさんのパンはすごくおいしいですし、日常食としてもお手頃の値段だし、本当に言葉通りおいしさという本質を求めてやられているのが伝わってきます。


ケンさん:うちって全然おしゃれな見た目じゃないじゃない?

でもさ、きれいなパン屋さんでも、来て、ああおしゃれだなって感じて帰るよりも、今のこんな感じのおしゃれじゃないお店で本当に大丈夫かって違和感とか感じてもらえたらいいんじゃない(笑)?

 

 ※ ブーランジェリーケンのお店外観。


”おいしさ”という本質を求めた結果、安いからでも高いからでもなく、自分が良いと思ったこだわりの材料を使って、より多くの人に食べてもらえる値段で多種類のパンを販売する。

それを正直に追い求めたからこそ、より多くの様々な好みを持った人に愛される全国でも有名なお店になったのだと感じました。

かっこよさやストーリーでなく、とにかく本質を求めるそのケンさん(田崎さん)の姿勢を、もっとたくさんの人にしってもらえたらなと思いながらお話を聞かせて頂きました。



ブーランジェリーケン

東京都板橋区赤塚2丁目2−17 東永地産ビル 

東武東上線 下赤塚駅から徒歩2分

お店の詳しい情報はこちら


※1 ダマンド生地:クレーム・ダマンド(アーモンドクリーム)を焼いた生地です。

※2 スベルト小麦:現在広く流通しているパン用小麦の原種といわれている。

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